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2009年5月

世界規模の大不況を抜けた次の世界は?

 今年のゴールデンウイーックも5日現在、残り1日を残すのみとなった。
昨年から続くアメリカ発のサブプライムローン破綻が引き金となった世界規模の大不況と先月ぐらいから騒がれだした豚インフルエンザの発生によって、経済と病原菌のダブルパンチで、折角のゴールデンウイークも遠出を避けてローカルイベントなどに家族連れで参加して地元再発見を体験したり、また一方では政府の経済対策として打ち出した高速道路料金一律1000円の制度(土日休日のETC車対象)を利用して、この休日に帰郷や観光地に出かける人たちも多かったのではないかと思う。

 政府も国内の不況対策については、過日13.9兆円規模となる補正予算案も衆議院を通過し、後は参議院の採決によって、もし野党が多数を占める参議院で否決されても衆議院で再可決されれば、予算の執行は可能となる。
 大手企業への政府融資(日本政策投融資銀行)や、中小企業に対する政府機関を通じたつなぎ融資も少しづつではあっても動き出している。また昨年から一時大きく騒がれた派遣労働者や非正規社員の住居確保、失業問題についてもまだまだ充分なセイフティーネットが整備されたとは言えないが、政府や自治体が失業に苦しむ彼らを救うべく取った救済処置も動き出している。

 日本企業の本年3月末決算報告では、上場企業の過半数以上が赤字または大幅減収・減益となっている。これは製造業を中心とした米国市場への輸出依存度が(日本及び第三国を経由した輸出)欧州など他国より多いため、米国の経済大不況の影響をモロに受けて原材料から中間材、最終製品に至るまで大きな販売不振に陥った。

 近年日本の製造業は自動車産業に関連した事業に大きく依存する体質に転換してきており、世界最大の自動車市場であるアメリカが落ち込めば、日本の主要自動車メーカーにとって販売減は大打撃である。

 昨年9月頃からサブプライムローン問題が表面化して、銀行や証券会社の破綻に続き、住宅・小売から自動車販売まで大きく落ち込む中で、自動車メーカーは急激な在庫調整に走り、海外・国内の工場では昨年10月ごろから今年3月にかけて生産調整を図るため工場閉鎖を実施したり、残った工場の稼動率を落とし、月に何日か工場を休んだり、余剰となった非正規社員や派遣社員の雇い止めに走って、猛烈に製品在庫調整に向かった。

 自動車市場の主な輸出マーケットはアメリカとヨーロッパであったが、中国や新興市場のインド、ロシア、中南米なども世界大不況の影響を受けて販売が落ち込んでいる。しかし中国は世界的な大不況から国内経済を守るため、今まで輸出で溜め込んだ膨大な資金を、国内の内陸部などにインフラ整備や農村振興策に重点投資を進めて国内経済の活性化に取り組んでいる。新聞によると内陸部の中国国民でも融資を受けて家電製品や自動車を購入する国民が増えているとあった。

 今や日本にとって中国の自動車市場は最重要市場である。しかし、中国国内で売れる自動車は国産品が過半数を占め、残りを日本を含む外国メーカーで占有率を争っているとの事である。何故中国市場で日本車は売れないのか、それは国産品に比べてブランド力や品質が高くても、価格が国産品に比べて大幅に高いのである。

 Nano 今世界で話題をさらっているインドのタタ自動車の「ナノ」620ccクラスで22万円で今年から販売されると言う。昔日本の自動車市場(今から40年~45年ほど前)で国民の所得が上がり普通車購入が出来る時期が到来するまでの間、スバル360やホンダN360などの軽自動車が良く売れたが、世界の新興国市場では当時の日本の自動車市場の環境に当たるのだろう。

 現在は、地球温暖化に伴って二酸化炭素(CO2)を排出しない、環境にやさしい自動車が求められ、従来のガソリン多消費型から省エネタイプの車が市場で生き残っていく。過渡的には日本が先行しているハイブリット車が優位に立つが、最終的には水素ガスをエンジン内で燃焼させ完全無公害型自動車や自動車用バッテリーの高性能化により家庭や街中のコンビニスタンドで充電できる電気自動車が普及する事となる。そうなると自動車を構成する各パーツ(車1台で1万点以上にも及ぶ自動車部品が必要)も、今までの自動車産業の部品製造メーカーだけでなく、他業界からも自動車の新市場に新規参入する事も多くなって、現在日本国内にある自動車メーカー12社は、早晩集約や再編成されなければ生き残れない。

 極端に言えば、環境にやさしい車は動力に電機モーターと高性能な蓄電器を搭載したメカの構造がシンプルとなる車体構造に変化して行く。現に電機自動車市場ではアメリカで新興のベンチャー企業が電機自動車を開発しアメリカ市場で販売し成功しているそうである。そうなると従来の自動車メーカーの独占から、他業界の新規参入やベンチャー企業などとの激しい市場競争が行われ、家電製品に見られる大量生産・大量販売によって年々販売価格は下がる厳しい自動車市場の環境になるのではないかと想像される。

 環境にやさしい車を望む世界中のユーザーにとっては、市場競争によって品質の良い電機自動車が安価に手に入るようになれば大喜びである。世界中ではいまだに運搬手段としてロバや牛、馬などに頼っている人々も大勢いるわけで、貧しい国の人々が、外国から援助を受けて鉄道や道路などインフラ整備が進んでいけば、人の移動や経済発展の恩恵も受けられて国民生活も向上していく。ある程度生活が向上して行けば、現在インドで起こっている様に中間層が多く育ち商品購買力も伴って国の国力も向上していく。

 2006年にノーベル平和賞を受けたムハマド・ユヌス氏、バングラディッシュの農村で貧困層に無担保融資を続けてきたグラミン銀行と、同銀行を設立したムハマド・ユヌス総裁、貧しい農民が自立する手助けの成功例を示し、世界中の最貧国でも制度導入が期待されている。彼の進めたマイクロクレジットとは、少額無担保融資で工芸や畜産、農産物の加工、小売業などの小さな事業を興すために必要な数ドル、数十ドルという少額の資金を、資産や土地などの担保を持たない人に貸し付けるという事業である。その国の政府が貧困者を助けるために一時的な救済処置をとっても、支援が無くなれば元の木阿弥。それよりも当事者がマイクロクレジットの様な制度を利用して、貧しい人々が自立する事を手助けする制度が貧しい国にとっては有効である。

 従来の資本主義市場で行われている株式や証券投資などの資金調達や運用方法が、一部の金融関係者や資産家、事業家などの貪欲な利益至上主義的な行き過ぎが、今回の世界的な経済大不況を引き起したのであり、金融市場ではイスラム社会のイスラム金融制度が最近注目されている。

 イスラム金融とは、イスラム法(シャリア)に則した金融取引で、金利という概念を用いない点である。教典「コーラン」では利子の受取が禁じられている。
また、取引相手などの当事者が教義に反する事業(豚肉、アルコール、武器、賭博、ポルノ等)に関わっていないことが求められる。
イスラム金融の各取引が提供される際には、各金融機関等にに設置されているイスラム学者委員会が取引の詳細を調べ、シャリアに適していることを事前に認定している事が必要である。
イスラム金融の仕組み: http://www.jcif.or.jp/docs/20060908m.pdf

 いわゆるイスラムの教えに従い、金利収入を追及するのではなく、別の形で利益を還元する仕組みである。少なくとも資本主義市場の様な行き過ぎた、取引は何でもありでは無くて、商取引には一定の歯止めがかかる仕組みである。今回のサブプライムローン問題に関連した無秩序な金融取引を世界的にも、再発防止を図るため一定の規律と取引に制限を設ける検討が進んでいる。

 連休中に放送されたNHK緊急インタビュー番組(5月4日・5日放送)でジャック・アタリ氏のインタビュー第一回「危機の確信とは何か」第二回「世界を襲う5つの波」の第二回「世界を襲う5つの波」の放送を見ることが出来た。

 第1の波は、アメリカ支配の崩壊 第2の波は、多極化秩序 第3の波は、グローバルなルールと統治が必要になる 第4の波は、超紛争。21世紀は世界の多極化により、秩序が混乱し世界中の至るところで紛争が起きて、大変な混乱が生じるだろうが、その混乱の中から調和と共生をめざして新しい経済活動が始まるだろうと述べている。
第5の波は、超民主主義。さまざまなテクノロジーを利用しながら、超民主主義という、国家を超えた世界全体の調和と発展を目指す民主主義が台頭し、彼の言う究極の21世紀とは利他主義に基づく博愛の精神が、世界中に紛争をなくし、世界中の人々が豊に幸せになる世界を築くことができると述べていた。

 フランスの経済学者・思想家・作家でもある、彼の著書「21世紀の歴史」が話題となっている。アタリ氏の未来学/文明論/国際政治論は、欧州の存在意義を強く意識して、アメリカ中心の見方とは異なる点を有しているのが特徴といわれる。
 ジャック・アタリ氏は現在もNPOを立ち上げ貧しい人々の自立を助ける活動を、前述のマイクロファイナンス制度を活用して、アフリカ・チュニジアのチェニスで広く活動を行い成功を収めている。

 NHKの緊急インタビュー番組を見て、ジャック・アタリ氏の著作やインタビュー内容に興味を感じ、このブログを書くため関連する情報をネットで収集している内に、この番組に対する反応が直ぐにネットで流されているので少し驚いた。興味のある人は”ジャック・アタリ” ”「21世紀の歴史」”などのキーワードで検索してみると今まで知らなかった色んな情報にめぐり合える。

(M太郎)

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