混迷する政局の下、社会の閉塞感を打破する責任政党はいづれの手に?
梅雨が明けるまでにはもう少し待たなければならないこの時期、政治の世界では本格的な夏に入る前に既に熱い戦いは始まっているようだ。
6月の千葉市長選挙では、民主党が推薦する若干31歳の熊谷俊人氏が大方の予想を覆し千葉市長に選ばれた。4月は名古屋市長選挙で、5月はさいたま市長選挙で与党の推薦する候補が破れ、これで3連敗となる。次は静岡県知事選挙が7月5日投票日を控えている。首都圏の大票田である東京都都議選は7月12日が投票日となっていて、9月に衆議院の任期満了時期に合わせた前哨戦が俄然注目される。
6月17日に発表した政府の月例経済報告では、景気の基調判断を「厳しい状況にあるものの、一部に持ち直しの動きがみられる」として、2ヶ月連続上方修正をしている。自動車を例に取れば、政府のエコカー減税などの経済対策効果が現れ始め、大手メーカーのハイブリド車は受注が好調で、工場の生産現場も忙しくなってきているようだ。また、個人消費も家電商品のエコポント導入による購入助成策や、定額給付金効果もあってか、一部で景気対策の効果が出てきているようだ。
しかし、有効求人倍率は依然として下がり続けており、4月の失業率は5%にも達している。5月の失業率は5.2%と更に悪化している。有効求人倍率が底を打つまでにはまだ数ヶ月以上かかる見通しである。
昨年9月、リーマンブラザーズ証券会社破綻から始まるアメリカ発の金融危機の世界的な拡大と経済大不況は、その発生の原因究明と各国政府の大規模な金融支援策によってようやく落ち着きを取り戻し、アメリカではグローバルな市場競争原理の暴走を抑える、金融政策もFRB(連邦準備(制度)理事会)を中心に、金融監督強化策に取り組み、規制の「抜け穴封じ」を行って顧客の保護と金融危機の再来を防ぐ取り組みに着手しだした。
先日も、久しぶりに鎌ケ谷市の図書館に行って面白そうな本はないかと探していたら、一時話題となった「資本主義はなぜ自壊したのか」 中谷巌著 集英社インターナショナル発行 を書棚で見つけ読んでみた。
著者の中谷巌氏は、構造改革の急先鋒であった著者が何故自説を転換するに至ったかを述べている。本書の前書きの一部を引用すれば、『グローバル資本主義は、世界経済活性化の切り札であると同時に、世界経済の不安定化、所得や富の格差拡大、地球環境破壊など、人間社会にさまざまな「負の効果」をもたらす主犯人である。そして、グローバル資本が「自由」を獲得すればするほど、この傾向は助長される。』とある。
小泉政権発足以後、構造改革に邁進してきた日本企業はグローバル競争に打ち勝つため短期間の内に雇用形態を変革し、正規社員以外の非正規社員や派遣社員を多く採用し、人件費を抑えながら雇用の調整弁として活用してきた。2年前には過去最高の企業収益を上げる企業も続出したが、グローバル経済の破綻により昨年は一転して大幅な減収減益となって今年3月期決算では大赤字を出した企業が続出した。
筆者も10数年以上も遡る現役時代の頃から、多くの企業が社員の評価に成果主義を取り入れだして何か不自然なものを感じていた。日本企業で最初にこの成果主義を取り入れた会社はF社(通信機器メーカー)であるが、丁度グローバル経済で日本企業がこぞって人件費の安い海外に工場を移し、生産移転を始める頃からこの様な人事評価に成果主義が取り入れられる様になった。しかし、そのF社も成果主義の弊害に気づき軌道修正をしていると聞く。
最近のマスコミなどで報道されるサラリーマンや工場で働く社員は、成果主義の弊害で職場の人間関係もギスギスし、日本企業の特徴であった互いに協力して全体の成果を向上させていくという協調の精神が失われて来ているのではないだろうか。
日本も戦後の荒廃した時代から、国の再建時期を経て高度経済成長期を迎えるあの時代、国民生活レベルはまだ豊かさを充分に享受出来るほどではなかったが、会社で働けば毎年給与も少しづつ上がり、生活水準の向上が実感できたあの頃、公団住宅(2DK)に住み、平均的な国民の生活レベルも横並びで、働く意欲があれば自由に職業を選べて、収入も増えて「三種の神器」といわれた洗濯機・テレビ・冷蔵庫を購入出来た1億国民総中産階級の時代が、所得格差も一番少なく実に平和で将来に希望の持てる良き社会であったと思う。
しかし、戦後64年を経た今日の日本で国民は安心と安全が保障された豊かな生活が実現されたと感じているだろうか、否全くその反対である。グローバル経済の名の下に市場原理主義優先の構造改革(小泉内閣発足当時から)を推し進めた結果、所得格差が広がり、いままで日本人の間に存在していた相互信頼関係が薄れ、社会の安心と安全を保障する年金や医療保険制度も、監督官庁のずさんな管理体制の下で国民の信頼を損ねた。近年街中で起こる殺伐とした無差別殺人や、高齢者の犯罪増加、派遣切りに見られる弱者切捨てと貧困層の増大など社会不安は増加の一途である。
少子高齢化に突入した日本で、将来的にも日本人が安心した社会に暮らせるためには、まず消費税を数年かけて上げて(5%→10~15%)目的税として使い、危うくなった社会保障制度を抜本的に建て直す(全ての国民に生活の最低保障を行う)事が必須である。現在の様な中産階級の所得減少と貧困層の増加は社会を不安定化し、貧困層に対するセーフティーネットの整備や就業機会提供のサポート体制の充実が必要である。
明治以降の近代日本に於いても、国民の間に貧富の差が少ない社会の方が、日本人の精神構造も安定化していた。国民の大多数が平等であると感じていれば、他人に対する思いやりや貧しくともお互い様と助け合いの精神が培われてきたのだと思う。
はからずも、今回の世界的な大経済不況で表面化した国内の社会不安は、政府の推し進めた市場競争原理優先政策が、国民の間に所得格差の歪を拡大させ将来に対する国民の生活不安をもたらしている。そのため国政及び地方行政に於いても年金、医療保険制度など社会保障制度の抜本改革が求められているし、少子化が急激に進む我が国において次代を担う世代に対して、安心して子育てが出来る税制改革や各種支援策など制度改革を推し進めるべきであろう。
さて、冒頭の衆議院選挙の行方であるが、今国民が望んでいるのはこの閉塞感に満ちた社会を何とか良くして欲しいということではなかろうか。アメリカでも民主党のオバマ大統領が現れ「チェンジ」を旗印に、前政権のブッシュ大統領が出来なかった改革に果敢に挑戦をしている。就任前に勃発したアメリカ発の金融恐慌と世界への広がりを就任後の短期間の内に、解決の道筋をつけたオバマ大統領の行政手腕には希望を抱かせるものがある。
日本国民も今年の衆議院選挙でどの政党を支持するのか、日本版「チェンジ」を実行し社会の閉塞感を打破してくれる政党に国民は期待する。次期政権を担う政党が政権公約「マニフェスト」の中でどれだけ国民の期待に応える政策を打ち出せるのか、国民の一人として与党と野党の政策論議には当分目を離せない。
(投稿:M太郎)
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